裂肛(切れ痔)の治療と手術
原因となる便秘や下痢を防ぎ、傷を治す保存療法が基本となります。肛門括約筋が炎症を起こして肛門が狭くなってしまった場合には手術を行います。手術を必要とするのは、裂肛の患者さんの1割程度です。
保存療法
食生活や排便習慣などのライフスタイルを改善して、痔の症状を悪化させないようにする「生活療法※」が中心です。補助的に「薬物療法」も行います。
※生活療法については「痔と生活習慣」をご覧ください。
手術療法
【内括約筋側方皮下切開術】
保存的な治療を行っても、排便時の痛みがひどいときや、一度治っても再発を繰り返すことで、裂肛が肛門狭窄になった場合は、肛門部の狭くなった部分を切開する「内括約筋側方皮下切開術」を行います。
これは肛門の周りの皮膚から、粘膜の下へとメスを挿入していき、狭くなった内括約筋の一部を切開して、肛門を拡張し、病変部がある場合にはその病変部だけを取り除く手術方法です。現在では、これが主流となっています。局所麻酔を行いますが、1〜2分程度の時間ですみ、外来でできる比較的簡単な手術方法です。この手術で肛門が広がり、切れにくくなり、痛みもやわらぎます。
【用手肛門拡張手術】
肛門に指を挿入して、狭くなった肛門を広げる方法です。切開は行いません。
【皮膚弁移動術】
裂肛が完全に慢性化し潰瘍を作り、肛門ポリープや皮膚痔を伴い、なおかつ肛門狭窄がひどい場合には入院して「皮膚弁移動術」が行われます。
まず、潰瘍や肛門ポリープ、皮膚痔を切除します。同時に、狭くなった肛門を切開して広げます。その後、肛門を広げたり、皮膚痔やポリープを取り去った後の傷口は、すぐ外側の皮膚と 縫合して閉じます。しかし縫合した部分は、無理に寄せて縫ってありますから、はずれてしまうことがあります。そのために縫合した部分の外側に弧状に皮膚だけ切開を加えます。結果として皮膚の弁が作られるわけです。この皮膚の弁が肛門の中に移動していき、新たな肛門となるわけです。これは他の痔の手術の後遺症で肛門が狭くなった場合にも応用できる手術方法です。
ご注意:このページは一般的な知識や治療方法などをご紹介したもので、医療機関により大きな違いがあります。 肛門は大変複雑で繊細な部位ですので、信頼できる医療機関をご受診ください。
監修:岩垂 純一
(岩垂純一診療所 所⻑/医学博士)